【事件激情】再掲@サティアンズ 第五解【地下鉄サリン事件】
「性欲の捨断ができない」
──菊地直子の「日記」より
1996年11月、所沢のアジトに警察が踏み込んだ際、すんでで逃走したものの、
一生の不覚な超恥ずかしい日記が押収されていた
オウム真理教による犯行の経緯、警察の事件捜査は、原則公開された情報にもとづく。
ただし丸メガネの女はじめこの色で示される人物は、架空の警察官であり、
実在する警察関係者やオウム信者と彼女の関わりは、創作全開ソースは妄想である。
「はい、息をゆっくり、ゆーっくり」
オウムは初めから異様な集団と思われてたのではなく。
発足当初の80年代半ばからしばらく、ニューエイジ仏教としてもてはやされていた。
学者やらが絶賛したり、麻原が大学で講演したり、麻原と著名人やらが対談したり。
(そのへんの方々は、いま何もなかったように振る舞ってる)
オウムだけではなく、アンチ物質文明的なもの、今流ならスピリチュアルが、なんとのう許容されてた、というか気分的に求められてた空気があった。
とりわけニューアカのブームで急にもてはやされた人文学系ハイソとその影響を受ける偏差値高い系が、ヨガやら気功やら霊感やら民間療法的なあれやこれやに傾斜したのがこの時代。
ときはバブルで金があるんだけどなんか乗り切れない、こんなんでいいんかしゃんボクは誰ここはどこ?
まーヒマ人が多かったんである。
そして、いつの時代も宗教詐欺にだまされやすいカモ層はというと……やはり安心安定いつものごとくいつものようにだまされた。
が、
さすがに94年後半までくると、なにかとニュースを賑わす異形イメージに、
やや引き気味な若者も増えてくるんで。
なので、今までどおりの勧誘以外にも、道場とはべつにレンタルルームなどで気軽なヨガ体験教室とか神秘体験イベントとか、尾崎豊追悼ビデオ鑑賞会とか、イベント系サークルもどきょんとか、
いろんな擬装戦略をとるようになった。
とっかかりはオウム色無し、回を重ねてずるずるずる深みに。
なんでいきなり尾崎豊?というと、尾崎豊とオウムは、社会とか大人とか世間とかに反発するメンタリティの方角が似てて共通の土壌があるんで>尾崎ファンなら勧誘>入信へともってきやすいから。
「おい、あれ、どこから来た子だ」
「在家の友だちだそうです」
「なかなか(グルの)お好みのタイプじゃないか? 小柄で素朴な感じだし(ロリで処女っぽくて清純ぽいしアジア風味だし)」
「でも髪短いですよ」
「伸びるだろ髪なんて」
ダーキニー候補がひとり病気になった。
選考写真の人数が少ないと尊師のご機嫌が悪いんで。
ダーキニー
麻原の側室美女美少女。オウムの裏が暴かれる中、マスコミが最も騒いだC級ネタがこれ。
信者にはノー下半身ライフ@G行為も禁止な!を強制しておきながら、
グル本人はハーレムつくってもーやりたい放題に下半身ライフを満喫していた。
グルの霊的エネルギーを注入する左道タントライニシエーションつまりセックスで、男より深い女のカルマを祓ってあげて最終解脱者の義務をはたすとかいう理屈で。
これどっか未開の部族の風習じゃなくれっきとした平成日本の女子がマジありがたがってあの肉玉の霊的エナジーを注入されてたんである。
第2サティアン3階には“大奥”があり、女信者からスカウトされたダーキニー10数人が暮らす。入れ替えはあって、これまでざっと100人が“お手付き”になった(麻原四女@当時5歳語る)
麻原は明の太祖朱元璋の生まれ変わりにして徳川家光の生まれ変わりだそうなんで大奥あるのは当然であるらしいからして。
なんかこーものすごい分かりやすいというかなんというか…。
ただし、グルのエロバナも平成大奥もいちおう舎外秘である。なにしろロリ処女好きを反映して15歳もいるし、17歳に子どもまで産ませてるし、これ外界に知られるとさすがにかなりまずいんでねえ。
もちろん内部でも大半の信者は知らず、わずかな幹部だけが心得まして全国で女衒よろしくダーキニー集めにいそしんでる。←今ここ
さすがにさいきんはグル好みの美人信者美少女信者も在庫切れで、
ダーキニー候補探しに幹部もひいこらいってるとこ。
「あ痛たた、からだ固いです。合掌のポーズしかできません」
「あんまり頭よくなさそうですよ」
「ダーキニーが頭いい必要なんてないだろ」
「あの子ならきっとすぐお気に入りになるぞ」
「じゃ、すぐ出家させましょう!」
「まだ入信すらしてないのに今ここじゃ不味い。
(拉致るなら)写真見せてグルの許可もいただかないと」
「はい、18です。幼く見られるんですけどー。ヨガでセクシーになれますかねえ」
「18歳。これはいいぞ。もっと下に見えるが」
18歳未満を出家させる(拉致る)と家族ともめたときよけい厄介なんで。
「ふむ、大学生か。一人暮らしだとなお望ましいな(拉致りやすいから)」
「おいしー」
「ちょっと例のもの軽く混ぜてますから、30分くらいで効いてくると」
「帰宅する頃にはほろ酔い気分だな」
「初めてのことばかりで楽しかったです、来週また来ますー」
「家を突き止めろ」
拉致したあとはニューナルコ@薬物&脳に電気ショックで忘れさせて
自分の意志で出家したように思い込ませればいい。
「誰か動けるやついるか」
「ガフヴァラティーリャ師が来てます」
「ちょうどいい、じゃガフヴァ師にやらせよう」
というわけで呼ばれた、
ガフヴァラティーリャ@瑞本悟@自治省
まったく、けっきょく雑用はいつもオレの仕事かよぶつぶつ。
あんな小娘を尾けるくらい道場の誰でもできるだろってんだぶつぶつ。
毎度「じゃガフヴァにやらせろ」「じゃガフヴァでいいや」
おれジャガフヴァって名前じゃねーってのぶつぶつ。
古参信者、早大法@中退のいちおう高学歴、
+坂本弁護士一家ポア犯6人衆の1人、
のわりにはポア犯の中でただ一人、なぜか出世が遅く。いまだヒラのサマナ(出家信者)に毛の生えた師でしかない。
なのに腕っ節が強いからってシークレットワーク(つまりバイオレンス)のたび動員。
さらに坂本事件のあと、麻原から、
「おまえは前世でわしの息子だった。わしは明の太祖朱元璋で、おまえは──」
麻原的にはそれで端本が感動して泣いて喜ぶ予定だったかも知れないが、
端本はあいにく、
「中国嫌いだ」
バカじゃないか、どんどん冷めた。麻原の言うことなすことバカバカしい、
修行も身が入らない、麻原バカ野郎ぶちのめしたい、
八つ裂きにしても足らねえ教団もくだらねえ。
もう下向つまり脱会したい、ぼやきつつも殺しに関わってるから足抜けできない、実家の近くまで何度も戻った、でもやっぱ戻れず、で、結局ずるずるオウムにいる。
気づけばシークレットワーク専門要員みたいになってて。
【松本サリン事件】ではサリン噴霧仕様トラックの運転手兼護衛役。
サリンを撒いたときは、白い煙を「またバカやってるな」と醒めた目で見てた。村井たち科学技術省のつくるもんなんてどれもガラクタポンコツなんだし、
一度なんてガラクタ潜水艦もどき(ドラム缶製)に乗ったら沈没、死にかけたし。
例によって村井の珍兵器で、麻原に文句言ったら、
「おまえの帰依が足りないから失敗したんだ」
なぜか逆に怒られて。
なんだそりゃ。クソあのでぶいつかぶちのめしてやる。
サリンとかカッコつけやがって、どうせまた失敗作で今度も悪臭騒ぎ程度だろう、
と思ってたら、
うっわマジかよ。
もはやなんでオウムにいるのかわかんなくなってるジャガフヴァ端本である。
じつはこういうずるずる系が、逮捕された信者には多い。
で、そのガフヴァ師にくわえて、
女を尾行するんなら女もいた方がいいだろ、と、
ちょうど最寄りの道場に来てた自治省の「セーラー」が同行することに。
そう、あのオウムシスターズ4姉妹の次女@22歳である。
衆院総選挙で初々しく踊ってた少女も、もうすっかり大人の女。
で、思わぬ偶然にガフヴァ@端本どきまぎ。
だってガフヴァ端本は、この春、セーラーが警備班に配属されて、よく顔合わすようになってから、ずっとセーラーに煩悩を@つまり片想い中なんで。
でも自分みたいな口べたな空手バカ一代に煩悩られても
彼女に迷惑だろって分かってるんでorz
4姉妹は教団の広告塔、スター信者だ。
パンフやビデオにも出るし。10代でホーリーネームもらってるし、待遇もいい。
端本がオウムの裏世界の住人なら、セーラーは日の当たる表っ側で生きてる。
セーラーだったら当然もっとステージが上の幹部と付き合えるだろう。
ハーレム―ヴェールに隠された世界
いやダーキニーにだって…
もうそれ考えると胸が張り裂けそうなんで考えないようにしてる端本である。
端本がぶつくさ文句垂れながら麻原の“危険な遊戯”に毎度加担してるのは、なんだかんだいって本音では上のステージになりたいからだ。
まあそれこそもろ煩悩なんだが、
それは信者みんなそうなんで言わない約束だ。
オウムは高学歴エリート信者、美人信者ばかりクローズアップされるけども、そうでないふつーのヒラ信者サマナがとうぜん多数。名も無きその他大勢である。
学歴も技能も美貌もない下っ端信者は、全財産をお布施したあとは、朝から晩までワークと称するタダ働きで自由時間もなしでこまごま戒律でがんじがらめで1日1食しかも豚の餌(本当に豚用の飼料だった)食わされて奴隷以下家畜未満くらいの扱いだが、
菩師長や正悟師になると生活レベルぐんっと上がり、戒律なんて建前だけだよってのは、下っ端は知らないが、正悟師とのワークも多い端本は知ってる。
だからなんとか師長、できれば菩師長になって、
んでもってセーラーと──
なんてのは叶いっこない、分不相応な男の夢のまた夢の、
と分かってても思い切れないガフヴァ端本である。ええいもうぶっちゃけセーラーの顔を見たり、声を聞けるからってだけで、たぶんまだオウムにいるのだった。
という端本とセーラー、近日拉致予定の美少女@18歳を尾行中。
「駅に向かってますね」
「どの路線に乗るかな。自宅は…葛飾区…ん? んー、申込書の書き方だと…
なんだこりゃ、住所どこなのかよく分からんな」
ん、なんか様子がおかしいぞ。
どこへ行くんだ?
あ、トイレか。
「すぐ出てくるだろう。待つか」
「あのうガフヴァ師、あんまり男の人がじろじろ女子トイレ見ない方が…」
「あっ、そうか、す、すまん」
「い、いえ。わたしこそすみません余計なことを(///_///)」
「いや、ありがとう。お、教えてくれて(///_///)」
「は、はい(///_///)」
「(///_///)」
「(///_///)」
「ずいぶん長いな、例のジュースが早く効きすぎたか?」
「あ、もしかして他にも出口があるのでは?」
「しまった、そうか」
「ちょっとわたし見てきます」
「あっ」「きゃっ」
「すみません」
「こちらこそ、ごめんなさい」
「え?」
いない? どこ? どうして?
「永田町より本郷へ、そこから見える? 」
「トイレの前、途方に暮れる若い男女2人組、紺シャツのごつい男、長髪細身の女」
「本郷より永田町へ。見える。美女と野獣だな」
「永田町より本郷へ、美女と野獣に追尾つけて」
「本郷より永田町へ、了解。なにが18ですだ、なにが幼く見られますだ、いくつだおまえ、なんでバレねえんだ」
「永田町より本郷へ。メガネはずしてただけですけどね」
「本郷より永田町へ。どんな魔法のメガネだよ」
「永田町より本郷へ。さあ? 思い込みってのが人間の脳は起こるみたいですよ」
あとで美少女@18歳は、ヨガ教室にいた誰の知り合いでもなかった、
と遅まきながらわかる。
みんな「自分以外の誰かが連れてきた子」と思ってた、というかそう思わされてた。
そしてヨガ教室にいた全員が、美少女@18歳の容姿を説明しようとしても、
なぜかみんなの説明がてんでばらばらなのだった。
さらにグルに見せるため盗み撮りした写真も、
撮る瞬間に激しく動いたみたいに顔がブレて1枚もまともに写ってなかった。
「すまん、セーラー」
「おれがしくじった。上にもそう言うから。あんたは心配するな」
「いえ、わたしにも責任がありますから」
「本当にすまん、おれなんかと組んで災難だったな。迷惑かからんようにする」
「ガフヴァ師、どうしてそんなこと言うんですか?」
「え?」
「わたし災難だなんて思ってません。そんな風に言われたら、わたしは悲しいです」
「お? あ、う、お?…」
「罰なら、わたしも受けます、一緒に受けます」
恋愛禁止の刑罰(名前だけ修行)は苛酷で。ときには死も招く。
だが禁じられるほどさらにさらに萌えるのは愛の新世界の常。
サティアンの薄暗がりのあちこちで、刹那的に、ひそかに、愚かに、
だからこそ激しく、熱病のごとく、禁断の炎が燃え上がった。
「戻りました」
「美女と野獣に追尾2名ずつ付けたぞ。お、差し入れか」
「はい、どうぞ。あそこでもらった特製ジュースを飲むフリしてこれに」
「要らんばかもん、そんなもん飲ますな」
「美女はオウムシスターズのひとりです。選挙で踊ってたけど大人になりましたね。野獣の方は非合法要員ですね。彼が会う信者や立ち回り先、出入りする車両を追えば、オウムの非合法活動を把握できます」
端本悟とセーラーの恋愛にいたる過程と時期はリアルとは違う念為。2人が恋人関係になったのは、ここで書かれてるより3か月早い94年4月だった。
■
山梨県富士ヶ嶺
まもなく全国に名を馳せてしまう、風変わりな村名。
富士山をのぞむ小さな自治体なんだが。
上九一色村のあちこちで不在地主の野っ原が買われ始めたのは、90年代に入ってまもなく。
92年になったらいきなり重機がどんどん入り、工場か倉庫みたいな鉄骨建築やらプレハブ建築やらがどかどか建った。
オウム真理教の「首都」、上九一色サティアン群である。
相変わらずオウム建築は、宗教施設というよりバラック群にしか見えんけども、
そのなかでもひときわ異様なサティアンが。
ぐねぐね剥き出しパイプがちょっとスチームパンクな、
第七サティアンである。
大半の信者はその中で何やってるか知らなかったし、
あんまりいろんなこと知りたがらない方が身のためだと心得ていた。
第七サティアン内部では──
パイプやら反応釜やらポンプやらがひしめき、
さらにスチームパンキッシュな化学プラント設備がぶんぶん唸っていた。
「サリンプラント」
グルのご意向「年内にサリーちゃん70トンつくれ」
サリーちゃん、まほう、まほう使い、サチャン
>>サリンの符牒。
サリーちゃん70トン。
全人類70億人分の致死量である。
【第六解 イエスマンズ】へとつづく
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